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【第十三回】よしなしごと

2019.09.25


いきなり「よしな、仕事」ではありません。徒然草の「よしなしごと」です。最近日本史を勉強しており頭の中が歴史の単語でいっぱいなのでこうなりました。そういえば、学生時代、通っていた大学の近くに徒然草で紹介されたお茶目なお坊さんのいるお寺がありました。


さて本題です。こういう仕事をしていると、日々言葉に関してああそうだったのかという発見があります。そしてそれをきっかけに、ああでもないこうでもないということをとりとめもなく考えます。今回は英文の解釈にはあまり役立たないかもしれませんが、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつけてみたいと思います。


1. 地震、雷、火事、親父
いくら怖いからといって父親を災害と同列に置くのはどうかとは、以前からぼんやり思っていたのですが、調べものをしていて偶然、おやじは「親父」ではなく「おおやまじ」つまり「台風」のことであるとわかりました。最近はインターネットに何でも載っていて便利です。

雷で思い出しましたが、仕事を始めたころ、

Someone is expected to feel the wrath of Jobs tomorrow.

という文に「明日誰かがジョブズの憤りを感じることだろう。」という訳をつけた人がいてとても驚きました。

辞書を引くと wrath は確かに「憤り」ですが、だからといって「feel the wrath」を「憤りを感じる」にしたら、"good morning" を「良い朝」とするのと変わりありませんね。これは「feel the wrath of God(天罰が下る)」を下敷きにした表現ですから、「神様スティーブ・ジョブズの天罰が下る」とか、せいぜい「雷が落ちる」にしないといけないと思います。

似たようなことが "I won't bite." でもありました。これを「噛みついたりしないからさ」などと「くだけた」表現にしたところであまり意味がないと思うのは私だけでしょうか。人間は犬とちがって無暗に噛みついたりはしません。ことさらに「噛みついたりしない」などと言うのは、異常な人間ではないという宣言をしたいのでしょうか。"I won't bite." は英語の決まりきった表現なのですから、日本語も「取って食う」などの決まり文句をあてないといけないと思います。

すこし理屈っぽい話になりましたが、ついでにもう一つ。これは逆に決まり文句をあてるとすこし分かりにくくなるかもしれない例です。
"It's a piece of cake." という表現、「楽勝だよ」という意味ですね。日本語には同じ成り立ちで「お茶の子さいさい」という言い方があります。「お茶の子」はお茶についてくるお菓子のことで、小さくて簡単に食べられるから「簡単なこと」を表すようになったそうです。でも今の若い人にはきっと「楽勝」のほうがしっくりくるだろうと思います。

「楽勝」で思い出しましたが英語には、"mickey mouse course" という表現があります。これは簡単に単位が取れる「楽勝科目」という意味だそうです。"mickey mouse degree" になると「取得する意味のない(役に立たない)学位」、"mickey mouse job" だと、いわゆる「やっつけ仕事」。だんだんひどくなります。ミッキーさんが大好きな私としては悲しくなってくるのでこの辺でやめておきます。


2.私語
「私語」って本来は「無駄口」ではなく「ひそひそ話」という意味だそうです。「私」は「個人」とか「個人的」という意味ではなく、「ひそかに」という副詞の意味で、「私淑」などがその例です。それで思い出したのが英語の "personally" です。なんでもかんでも「個人的に」と訳す人がいますが、I will thank him personally. は「直接会って礼を言う」ですね。翻って、日本語でも「『親しく』お言葉を」を「親し気に会話を」くらいに思っている人がたまにいますが「親しくお手植え」にはどうするのでしょうか。「苗木と仲良し」なのでしょうか。「親しくお言葉を」は「直接お言葉を」ということですね。


3.度と回の違い
繰り返しが予想されれば「回」、そうでない場合は「度」。だから「仏の顔も3回」とは言えないのだとの説明がありました。
そうか、だから読売新聞は「読売ジャイアンツは5年ぶり37回目のセ・リーグ優勝を達成しました」なのに、日経新聞は「....5年ぶり37度目の優勝を決めた」だったのですね。


それではまた。よさこい。よさこい。

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